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DRILLOOOON!!!!

だいたい1000字くらいで20歳の夏の思い出を書き溜めます。

世の中、ずるいやつばかり。

起きている誰かが、祭りの後始末をしなければならない。

ポエトリー

ひとすじの涼しい風が、地上100mの窓から入ってきて、ドアから出て行った。

今朝の5時半のことである。

僕はとあるマンションの31階から霧雨のそぼ降る新宿を眺めていた。

 

辺りには雑魚寝をする人々。

 

ソファで寝る同期。床に丸まって転がる先輩。

二つしかないベッドを占領する、同期と同期と後輩。

 

そんな奇異な光景を見ながら、僕は粛々と缶ビールの後始末をしていた。

宴の翌朝の、なんとも言えない酒に対する忌避感。臭いに顔をしかめながら、誰かがたっぷりと放置した麦の酒を流しに捨てていく。

 

ここは僕の先輩の家のゲストルームだ。

昨日の夜は、つまりは新入生を歓迎する集まりがあって。

もちろん彼らに酒を飲ませるわけにはいかないので大人だけで酒を買って、飲んで、ワイワイと喋ったり笑ったりしていた。生来のいじられな性格もあってか、服を着たまま風呂に落とされて携帯が壊れかけたりもしていた。

 

そんなこんなで、場が終わったのは確か3時半くらいだったか。

 

一人、また一人と動かなくなり、僕も記憶が飛んだ。

次に目が覚めたのは5時頃。

SIMカードが水没して電波が入らなくなっていた僕の携帯も時刻だけは教えてくれた。

 

あたりには、同期や先輩が飲んだ瓶や缶、食べたご飯やお菓子のゴミ。

外はもう明るくなっていて、今日が来たことを教えてくれていた。

 

もうここまで書いてしまってから言うのもなんだけれど、僕はそのサークルの長をしている。と言っても後3か月もしたら引退するが。

 

大先輩の家のゲストルーム。寝転ぶ同期と後輩と先輩。起きているのは僕だけだった。

 

ここで冒頭に戻る。

 

悪臭とゴミの散らかる惨状に耐えかねた僕は片付けを始めた。

後始末だ。

朝10時から例の新宿インターンがあるし、起きていようと思って始めた。

 

これがなかなか難航した。

寝ている人を起こさずに缶やビンを集めて処理して捨てるというのは神経を使う。

 

結局、部屋が片付いたのは6時半くらいだったか。

僕は謎の達成感に包まれながら、新宿とは思えないほどさわやかな風が吹くベランダに出た。

起きている誰かが、祭りの後始末をしなければならない。

楽しい時間を過ごすと、人間は精神エネルギーを得るが体力は失う。

そして泥のように眠ってしまうのである。

逆説的に言うと、眠りに深く落ちなかったということは…

 

いや、断定はできない。

 

僕はもともとこういう場では責任感が強く働き、いくら酒を飲んでも酔っ払ったりしないし気が付いたことがあればすぐにやろうとするタイプだ。

楽しんでなかったのか?という疑問は考えるに値しない。

 

とにかく。

 

僕だけが起きていて、みんなは眠っていた。

部屋が汚かったから、僕が勝手に掃除した。

 

それだけのことだ。それだけの早朝だった。

 

ふぅ、と深く息を吐き、冷たい空気を鼻から吸い込む。

3時間後の仕事のことを思い、何をすべきか考える。

 

祭りの後始末はつけることができた。僕一人の力で。

これは小さいけれど自立していると言えるのでは?

 

そこまで考えたところで、視界の端に白いものが映った。

 

 

 

 

 

 

ベランダにいくつもカップアイスが落ちていた。

 

 

 

 

 

 

自然と苦笑いが溢れる。

「さすがにそこまでは気がつかなかったわ笑」

 

 

 

起きている誰かが、祭りの後始末をする。

見て見ぬふりはしてはいけない。なかったことにしてはいけない。

 

この社会においても、みんなが人生を謳歌し笑う中で、「冷静な誰か」は気づいてしまった「問題」をたった一人で解決してきたのだろうか。

 

そんなことを考えながら、僕は31階のベランダに染み付いた白濁を拭っていた。

背後の、少し開けた窓から、人と酒と食べ物の混じったくさい風が新宿の空に消えていった。