DRILLOOOON!!!!

だいたい1000字くらいで20歳の夏の思い出を書き溜めます。

世の中、ずるいやつばかり。

日々仮説がアップデートされていく、僕らの人生観を変えていくもの。 - 『データの見えざる手』感想

前段:僕たちは 確かめずには いられない

関東ではもうほとんどの桜たちは満開の時期を終え、その花びらを散らしていた。

桜の花びらが落ちる速度は、実際には「秒速5センチメートル」ではないらしい。

monoist.atmarkit.co.jp

 

科学は時として、僕たちがなんとなく信じていた物事が違っているということを教えてくれる、やや冷たい一面をのぞかせることがある。そういう時、僕たちはちょっとドキッとするし、どこか決まりが悪くなる。

 

でも、「うっ」と思うと同時に、僕たちは「僕たちが信じていること」が本当に正しいのか確かめたくなってしまう。

よく、「知らない方が良かった○○の真実!」とか言ってネットメディアやテレビ番組で特集が組まれるアレだ。まあ、イチゴジュースのピンク色がコチニールカイガラムシ由来であるとか、抹茶アイスの緑色は蚕のフン由来っていうことを知ったところで、僕たちはそれを話のタネにしながらこれまで通りに抹茶アイスとイチゴジュースを愉しむだけだけれど。

 

僕たちには、そこかしこで目にし、耳にし、体験した物事をもとに、人生に対して「仮説」を作っては壊し、作っては壊しを繰り返してだんだんと真実に近づこうとする欲求が生まれながらにしてあるのかもしれない。いや、これは先進国特有の感情か?

 

その「人生仮説検証」を後押ししてくれる技術がある。

それも、人間一般ではなく「僕たち個人個人」が対象である。

それが、ウェアラブルセンサ」「ビッグデータ活用」だ。

本文:受動意識仮説と不確定性原理とデータの見えざる手

今回読んだのはこの本。

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

日立製作所の中央研究所の主管研究長を務めている矢野和男さんの著書。

2004年からウェアラブル技術とビッグデータの収集・活用の先行研究で世界を牽引してきた方、とのことだ。

文系の学生の僕には、不勉強なために途中若干理解に時間がかかる部分もあったが、基本的には平易に、万人にわかりやすく主張してくれているように感じたので、誰にでも勧められる。

 

さて、この本のどこが面白かったか、という話に入っていく。

 

人間の行動は本当に自由なのか?という問いに対して、「法則がある」という答えを出した
「幸せ」を定量的に可視化し、職場の生産性に結びつくことを示した
ビッグデータ人工知能のコンビが、人間の専門家による問題解決より良い結果を出した

 

圧巻であった。

24時間365日、述べ100万人日以上のデータを収集した結果、これらのことが明らかになった。

僕たちは、自由であるからこそ法則に従うし、それを方程式に表すこともできる。

僕たちは「幸せ=社会的成功」と思いがちだけど、実は違う。

実際のビジネスの現場で有効な「戦術」は、データが生み出し、証明していく。

 

僕はこれを読み終わった時に、「知らない方が良かった○○の真実!」を見たときと同じような「不思議な安堵感」を得た。

 

以前、僕が知っていた人生に対する仮説はこうだった。

 

受動意識仮説、つまりは「僕ら(=原子)の行動は宇宙の開闢以来完全に規定されている」「すべては決まっているのだから意志など関係なくすべて始まりから終わりまでをなぞるだけ」という考え方に絶望し、何をやっても無駄なのか。挑戦と失敗と成功はすべてラプラスの悪魔の手のひらの上なのか。と悲嘆にくれていたかつての僕。

そんなノーフューチャー文系20歳を救ってくれた、「原子の位置とその運動量の両方を知ることはできず、確率でしか把握できない」とした量子力学不確定性原理

だが、「すべては確率による」というランダム。「僕たちの目の前にはいまだ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく横たわっていた」と言いたくなるような「自由すぎる人生」。これをどう生きていけば、僕の人生の仮説検証はより良い方向に進むのだろうか。

 

「人生は、究極的には確率が支配している。すべては規定されていないが、その確率を制御する方法はいまだに見つかっていないから、自分なりのやり方で戦っていくしかない。」

 

そんな風に人生における仮説を設定し、思い悩んでいた僕に、この本は簡潔に以下のようなことを教えてくれた。

 

僕たちの人生は完全に自由ではなく、ある法則に従っている。

それは、データが証明ずみだ。 

そして、職場の生産性が上がる要因や、幸福度の正体も、証明できた事例がある。

何より、人間の専門家の出した答えを、ビッグデータを活用した人工知能の答えが上回った検証結果が出ている。

 

僕の仮説をより良い方向に変える可能性を秘めた技術、それがウェアラブルビッグデータ活用だった。バズワードくらいの認識でしかなく、それが制御できるようになるまでもっと時間がかかるだろうと思っていた2014年の僕に、「とりあえず読んでみろ」と教えてやりたい。特に、最後の「戦術レベルのビジネス領域では、すでに人工知能の方が人間を超えているし、その戦術を導き出したプロセスは人間には難解であるから、人工知能に任せてしまった方が良い」という検証結果は、佐藤航陽さんの「未来に先回りする思考法」にも出ていたっけ。

 

ウェアラブルでデータを取ること、その活用の威力がまだよくわからん。という人に、ぜひ読んでほしい一冊だった。

 

あとがき、つまりは個人的な話

こうして、僕は「心の病」から脱出して再び光の道を歩き始めることができるようになったというわけだ。ぬぐいきれなかった不安を今、ここで解消した。この分野については、積極的に後を追っていきたい。

しかしまあ、リベラルアーツを学ぶことの重要性が日々どんどん痛いくらいに感じられる。経験と理論を両方蓄えていく、そんな1年間になりそうな予感がする。

今は、「失敗の本質 - 戦場のリーダーシップ編」を読んでいる。こちらも、何か書きたいと思ったら書いてみようと思う。